戦略まとめ

世界1のマクロを徹底解剖 日米スクリム3試合目から北米最強のメタと動きを分析 後編

こちらの記事の後編になります

世界1のマクロを徹底解剖 日米スクリム3試合目から北米最強のメタと動きを分析 前編 


スクリム全体の所管についてはこちらをご覧ください。

前回の記事では最初のカジリガメ戦まででしたので今回の記事はその後の流れになります。

この試合ではカジリガメ戦で勝利し、相手の下の第一ゴールを壊すなど大きな有利を得ました。ttvはこの大きな有利をどのようにして維持し勝利につなげたのでしょうか。この試合では特にイレギュラーもなく理想的な試合運びができていたように思います。

・GA側はカジリガメを取られた時点で人数不利を悟り守り切れないことを察したため下の第1ゴールを捨てすぐさまロトムに向かいロトムを獲得しました。これに対しttv側はカビゴンのセーブにより上のゴールを壊されることは免れました。
こういった攻防の間、逆側のゴールが手薄になることは多く・GA側も下ゴールの破壊を狙っていましたが、ttvはきちんと野生のポケモンが枯れている下レーンにサポートを残しゴールをきちんと守っていました。特にプクリンに関してはカジリガメ戦後は試合を通して上レーンに顔を出すことはなく、常に下レーンに一人以上ディフェンスがいる状態を維持していました。

全員でロトムに向かわず下に残り相手を視察するシーン

特にソロランクではカジリガメを取った後に全員でロトムに向かう、あるいは上レーンに集合をかけている場面を時折見ますが正直あまり良い動きではないように思います。というのも下ゴールの有無は2回目のカジリガメ戦の継戦能力に直結するからです。ゴール下でのバリアや回復はもちろん、オボンのみの有無は体力の管理に大きな差ができますし、同じタイミングで集合し始めたりポケモンが落とされたとしても変速エリアによって戻ってくる速度に大きな差ができてしまいます。また、視界という観点でもアドバンテージがあります。
細かい点ですが破壊された際の救済措置にも差があります。上ゴールの破壊に対してはタブンネが3体湧きますが下ゴールの破壊に対してはタブンネが2体しか湧きません。お互いに一つずつ壊されるのであれば経験値の観点でも上を破壊された方がマシということになります。
こういった下ゴールの重要性をきちんと理解しているからこそ、ttvは下レーンに常に気を配り、必ず人数を割くようにしていたのだと思われます。

タブンネが上3匹に対し下2匹

2回目のカジリガメ戦ですがここはレベル差、ゴールの有無ともに有利なttv側がこれを制しました。注目する点は最初のせん滅でのウッウ+ハピナスのユナイト技のコンボでしょうか。ウッウのユナイト技は特にサンダーやカジリガメなどのオブジェクト前での集団戦で絶大な威力を発揮しますが、反面非常に脆いウッウが足を止めて移動できなくなりユナイト技中に倒されてしまうリスクを背負います。おたすけバリア等で耐久を補うことが多いですが、それでも高火力を一斉にぶつけられ、出し切れずに落とされてしまう場面を見ることも多々あります。ハピナスのユナイト技には火力を補強するだけでなく、ダメージの一部をハピナスが肩代わりする効果もあるため、合わせて使うことでそのリスクを大きく抑えることができます。

2回のおたすけバリアとハピナスの肩代わりでギリギリ耐えたシーン

・GA側はカジリガメを取れないことを悟るとすぐさまロトムを獲得しました。ラストスパート開始時間である2分直前のロトムは単純にゴール点数が2倍になる点やサンダーに対する人員減らしなどの観点から強いと言われておりさすがの判断の速さだと思います。

いよいよ終盤、サンダー戦です。ttv側はラストスパートが始まる前には中央を占拠し、ハピナスが相手のポケモンの飛んでくる位置のくさむらに待機するなど素早くポジションを確保しています。くさむらなどもある関係上先にポジションを確保している方が有利なのはもちろんなのですが、特にサンダーと両陣営を繋ぐ左右の通路は範囲攻撃で一網打尽にされやすく、ここから侵入する側とここを守る側とでは圧倒的に先にポジションを確保している側が有利になります。
また、細かな立ち位置ですが、プクリンは1つ目のゴールが壊れた少し奥くらいの位置から下ゴールを守っています。これは自陣下ゴールに対して中央からゴールしにくるポケモンがいないことがわかっている状態であることが前提ですが、相手がどこから攻めてくるか情報をとるための視界の確保だと考えられます。
守備に定評のあるttvですがこういった動きはさすがですね。

有利側によくみられる守り方ですが、上寄りに1人、中央寄りに3人、下寄りに1人の陣形です。今回は勝っているためサンダーを触る必要がなく、サンダーとゴール両方を守ろうとした場合やはりこの陣形がスタンダードかなと思います。ttv側の場合は上にゲッコウガ、下にプクリンとどちらも逃げ性能の高いポケモンを配置し、中央寄りの3体でこれらをカバーしています。こういった陣形に対して劣勢側は上下どちらかのポケモンを隙をついて素早く落とし切り人数差を作ることが重要になるため、上下に逃げ性能の高いポケモンを置くのは理にかなった配置です。

1-3-1の陣形 守りつつ相手を視察するシーン

レベル差と上記のポジショニング差があり、サンダー戦でも危なげなく・GAをせん滅し、ttv側が勝利を収めました。

この試合を分析するにあたって、大会を始めとした北米の試合をいくつか観戦しましたが、上レーンの重要視やプクリンの使用数の少なさ(この試合では使われていましたが)など日本との違いがでていて面白かったです。

追記:北米大会のプクリン使用数の少なさはユナイトわざを使っても90%溜まった状態にするバグを引き起こすから禁止されているようです

ソロでも参考になる点として

  • 下レーンに序盤強いポケモンを配置する
  • ガンク先は脳死で下にせず、ゴールにつながるアドバンテージが取れるか、助けが必要かをよく吟味する
  • 上レーン7:20のミツハニーの経験値を無駄にしない
  • カジリガメを取った後も下レーンに一人は残しゴールを守る
  • サンダー戦前のポジション確保と人数配分

などが挙げられると思います。もちろん下に序盤弱者が向かってはいけないという主張ではありませんし、一人でポジションを確保してもただ浮くだけになってしまうなど、そのままソロに適応できるわけではありません。しかしこういった動きを頭に入れておくことでソロでも他人の立ち回りの意図を掴みやすくなるのではないのでしょうか。MoBAは個人のスキルと同時にチームワークも大切なゲームです。セオリー外の動きを頭ごなしに否定するのではなく、戦術の視野を広げる機会になってもらえれば幸いです。

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